ガンダムHADES 小説版

自分がうごメモで作っていた同人作品のガンダムHADESの小説版です

ガンダムHADES 第0話

P・C 1865年 「平和世紀」と呼ばれた時代

世界には大きな争いもなく、平穏が保たれていた

この平穏は永遠に保たれるものだと思われた

だがこの世に永遠など存在しない・・・・・

突如ラング帝国がデスティックと名を変え世界に対し宣戦布告した

しかし完全に平和慣れしていた世界はこのことを大して重く受け止めなかった

宣戦布告から3日後、デスティックの攻撃により近隣国家が侵略され、焼き尽くされた

この件でようやく事態を深刻に捉えた世界は急遽世界連合国家連盟を設立した

こうして戦争が始まった

一国と全世界との戦争である。勝敗は見えていた

・・・・はずだった。

デスティックが開発した新型機動兵器「モビルスーツ

戦況は大きく変わった

モビルスーツ・・・通称「MS」呼ばれるその兵器の圧倒的な火力と汎用性に今の世界の兵器で対抗できるはずもなく

世界はすぐに降伏へと追い詰められた 後にD・W戦役と呼ばれる出来事である

そして・・・・P・C 1872年



「いたぞ!逃がすな!!」

その声と共に辺りに銃声が鳴り響いた。

「ちぃっ・・・!もう見つかったか・・・・」

そう若い男は呟くと、全力で走り出した。後ろから追ってくるのは男二人。こんなご時世である。その男たちがデスティックの兵士であることは言うまでもない。その兵士たちの装備はマシンガン。これが拳銃ならばまだ避けやすいだろうにと思いはするが、どこの世界に拳銃で逃走者を追跡する軍隊があろうか。若い男は軽くため息をついた。

―――右足に少し弾がかすった。

無意識に走る速度が速くなる。当たり前だ。むしろ今まで銃弾が一発もかすってすらいないのは奇跡とも言える。

―――まあ、相手の射撃戦スキルが相当低いという可能性もあるわけだが・・・・

とにもかくにも、今この男が追われている理由。それは男の右手にあるもの・・・小さな記憶媒体にあった。

それには、あるデータが記録されている。それは世界を変えるかもしれないデータで、うまく使えば、今現在デスティックに反抗している小さな組織ですら戦況を逆転させるほどの危険性を秘めている。それ故にデスティックはその情報を欲し、そして外部に漏れることを恐れ、この男を追跡させているのだ

「・・・・この情報だけはなんとしても・・・・・守りきらなきゃならない!」

男は平和を望んだ。それ故にこのデータをコピーし、他の記憶媒体からはこのデータを完全に削除した。例え自分が死ぬことになってもこのデータを渡すわけにはいかない。

薄暗い廊下。遠くから怒鳴り声が聞こえる。

「・・・・どうやら、追手は撒いたようだな・・・・・・」

ほっと安堵のため息を漏らす。が、油断はできない。ここはデスティックの軍事基地である。どこから敵が出てくるのか分からないのだ。

サッと辺りを見回す。敵の気配はない。監視カメラや隠しカメラのようなものもない。

「なら、今のうちに脱出させてもらうかな・・・・」

男は近くにあったコントロールパネルを数回軽く叩いた。それと同時に高い機械音が鳴る。

「発進ガ許可サレマシタ」

コントロールパネルから発せられたその合成音声は予想以上に辺りに鳴り響いた。男はハッと身を縮ませた。ゆっくりと首を回す。誰かに気づかれた様子もない。

「・・・・いやな予感がする。急ぐか・・・・・」

目の前の扉を静かに押し開けスルリと体を滑り込ませた。

そこはMSや戦闘機の待機ドッグだった。

「・・・どうせなら、MSを拝借したかった気もするが・・・・まあ、MSでは目立つしな・・・・」

そんなことをブツブツと呟きながら第3ドッグへと向かう。そこにあったのは

D26-2-S リトルアタッカー改 ステルス仕様

世界連合国家も使用していた迎撃小型戦闘機リトルアタッカーを改修したものに高性能な電波妨害装置を搭載し、電波や赤外線を吸収する特殊な塗料で塗装したものである。今現在この技術をMSに転用することが検討されているが、なかなか難しいらしく手間取っているようだ。

とりあえず、この機体ならば脱出さえしてしまえばこっちのもので、早々見つかることはない。

男がリトルアタッカー改に乗ろうとしたその瞬間

ドギュゥゥゥン!

「グッ・・・・・!」

後ろから放たれた一発の銃弾が男の右脇腹に命中した。傷口から赤色の液体が噴き出す。

「な・・・誰だ・・・・・!!?」

「抵抗は止め、素直に投降しなさい」

「・・・・・!まさか・・・・・!!!」

男が目を見開いた。が、すぐに痛みで顔を歪ませる。

「投降すれば、命だけは助けます。私は無益な殺生を好みません。あなたの賢明な判断を望みます」

「・・・・ハッ!よくも・・・そんなことが言えたもんだ。あんな・・・事をしておいて」

ゆっくりと後ろを振り向く。まず拳銃の放つ鈍い光が見えた。・・・・拳銃を使う奴もいるんだな・・・・そして、自分を撃った張本人の顔が視界に入る。

(やはりか・・・・・・!)

男は歯ぎしりした。

「こいつは光栄だな・・・お前・・が、直々に来るとは・・・・」

「・・・・・例え貴方でも容赦はしません。投降しなさい」

・・・・どうするか。相当厳しい展開になってしまった。今後ろには拳銃を持った人物が一人いる。それはこの男が知っている人物であった。故に分かる。この者が狙いをはずす訳は無いと。殺す気でここにいるのだと。

(・・・・・俺の命もここまでか・・・・・・)

男は自分の手の中にある小さな記憶媒体に目をやった。このぐらいの強度ならすぐに手の中で潰せる。少々勿体無い気もするが、背に腹は変えられない。意を決して右手の力を強めようとしたとき、

「何だ!今のは何の音だ!」

ドカドカと待機ドッグにたくさんの軍人が流れ込んできた。察するに先ほどの銃声に反応し、ここまで来たのだろう。拳銃を持った人物は軍人たちの方へ視線をずらした。

――――チャンスだ

男はリトルアタッカー改のコックピットへと飛び乗った。

「しまっ・・・・!」

相手がハッとして拳銃の引き金を引く。左足に直撃した。だが、この程度では(大量に出血しない限り)死にはしない。急いでコックピットを閉じる。外で銃が乱射され銃弾が機体の装甲に跳ね返される音が聞こえる。

男は発進のためにさまざまなスイッチやレバーをいじった後、後部座席をチラリと見やった。そこには小さな赤子がいた。Gに潰されないよう、特殊な装置で固定されている。

「・・・・・フ、何をいまさら・・・・。俺自身が決めたことじゃないか・・・・・」

赤子は外の騒ぎなど気にもせずスヤスヤと安らかに眠っている。たいしたもんだ。こいつは将来大物になるぞ。

「・・・・行くか」

右手側にあったレバーを前に押し倒す。それと同時にバーニアが起動する。至近距離の出来事であったため、数人の軍人が吹き飛ばされた。

その数瞬後、リトルアタッカー改は大空に飛び立った。

基地がどんどん離れていく。脱出に成功したのだ。

一方、基地のほうでは大騒ぎになっていた。当然である。軍の最高クラスの機密が奪われたのだ。落ち着いていられる訳がない。

MS隊が発進した。それに続き、リトルアタッカーやその他の戦闘機も発進する。

「・・・・どうです?奴を発見できると思いますか?」

一人の髭をはやした男が先ほどの人物に話しかけた。

「・・・まず無理でしょうね。何せあの人はD26-2-Sに乗っていったのですから。発見できる確立は相当低いでしょう」

ため息をついた。すごい疲労感だ。拳銃など久々に触った。昔はそれなりの腕ではあったが、また使えるかどうかは心配だった。

「・・・私は部屋に戻ります。後のことは頼みます」

「了解であります」

髭の男は敬礼をすると、すたすたと歩いていった。

また、ため息をついた。あの男の飛んでいった空を見上げる。

(・・・・貴方が我々の邪魔をしようというのなら、私は全力でそれに答えましょう。覚悟していなさい・・・)





TO BE CONTINUED




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